株式会社 夏井&カンパニー

すでに母のまなざし緑あふるる朝  夏井いつき

季語
季節
初夏
分類
植物
鑑賞

 長い夜でした。陣痛に耐えようやく迎えた明け方、産声を聞きました。
「元気な男の子ですよ」と胸に抱かせてもらった赤ん坊を見下ろすまなざしは、もう娘ではありません。母になった喜びと畏れ、逞しさと繊細さに黒々と濡れています。
 窓の外には緑の樹々が、濡れたようにつやつやと朝の光を照り返しています。
 この子が生まれてきた世界がこんなにも美しいことに、感謝の心があふれる朝です。
  
(鑑賞:富山の露玉)
(出典:句集『皺くちゃ玉』)