株式会社 夏井&カンパニー

鯉と鯉ぶつかる匂ひあたたかし  小木さん

季語
暖か
季節
三春
分類
時候
鑑賞

 季語「暖か」を表現するために、「鯉と鯉」が「ぶつかる」折に発する「匂ひ」に焦点を絞り込んでくるとは、実に鋭敏な感覚の持ち主だと感嘆致しました。「匂ひ」という3音の嗅覚表現が、作者の感知した光景を読者の脳裏に鮮やかに伝えます。
 「あたたか」くなってきた水辺に佇むと、「鯉」たちは餌が貰えるのではないかとざぶざぶ集まってきます。「鯉と鯉」が身を翻し「ぶつかる」時、池の水は大きく揺らぎ、水は「匂ひ」を放ちます。きらきらと春の日を弾く水面、「鯉」たちに揉まれる水の音、生臭い「匂ひ」。視覚と聴覚と嗅覚を、上五中七の12音で見事に表現し得てこその、季語「あたたかし」という実感です。
   
(鑑賞:夏井いつき)
(出典:松山市公式サイト『俳句ポスト365』2015年4月23日掲載分)