株式会社 夏井&カンパニー

春眠てふひかりの繭にうづくまる  夏井いつき

季語
春眠
季節
三春
分類
人事
鑑賞

 この句は、大きな特徴が二つあると思います。
 まずは、季語に「ひかりの繭」という比喩を用いたところ。春の目覚めは、明るさに満ちていて、正にひかりの繭に包まれたようです。
 しかしながら、もし「春眠てふひかりの繭につつまるる」であれば、凡庸であったと思うのです。
 作者の心は、決して寝床に横になっていたのではないのです。おそらくは、忙しく立ち働かなくてはいけない時であったと思うのです。体は寝床にあったとしても、すぐにも起き上がって何かをしなければならない。それでも、あまりにもひかりの繭は心地良く、心は既に一度立ち上がっているのにも関わらず、うづくまってしまったのです。
 それが逆にひかりの繭を際立たせています。
  
(鑑賞:佐東亜阿介)
(出典:句集『伊月集 梟』)