株式会社 夏井&カンパニー

うぐひすに井戸の深さを教へけむ  夏井いつき

季語
季節
三春
分類
動物
鑑賞

 「けむ」は、過去推量・過去の原因推量の助動詞。つまり、「教へけむ」は「教えたのだろうか」、「教えたからだろうか」と解釈できる。これがこの句のポイントだ。
 すなわち、自分が鶯に井戸の深さを教えた訳ではないが、誰かに井戸の深さを教えられた鶯が、自分の目の前に居るということである。
 一体、誰が鶯に井戸の深さを教えたのだろうか。それを知った鶯とは、どんな鶯なのだろうか、何をするのだろうか。様々な想像をかき立てる一句だ。
 鶯の透き通った鳴き声が、井戸の奥に広がる空間へと響いてゆく感覚。「うぐひす」の「う」、「井戸」の「い」、「教へけむ」の「お」の、あ行の音韻も美しい。
   
(鑑賞:若林哲哉)
(出典:句集『伊月集 龍』)