株式会社 夏井&カンパニー

荷車の墓石を曳いて春の牛  ポメロ親父

季語
季節
三春
分類
時候
鑑賞

 「荷車」という言葉自体がどこか懐かしい響きを持っていますが、「荷車」に積まれた「墓石」を「曳いて」いるのが「春の牛」であるよ、となるとさらに一昔前の光景にワープする心持ちです。
 この手の季語の使い方には懐疑的な俳人もいらっしゃるかとは思いますが、「春」というのどやかな季節が「荷車」や「牛」が現役で活躍していた時代の気分に似合っているのは間違いのない事実。「荷車」の前後には「墓石」を立てる人足の男らもいるのでしょう。荷台に積まれた新しい「墓石」は、「春」の柔らかな日射しに包まれてほんのりと温かく、優しい光を放っているのでしょう。「春の牛」のゆっくりとした歩幅も一句の味わいであります。
  
(鑑賞:夏井いつき)
(出展:ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2015年5月2日放送分)