株式会社 夏井&カンパニー

春愁の眼を水にひらきたる  夏井いつき

季語
春愁
季節
三春
分類
人事
鑑賞

 春の朝、顔を洗おうと水を満たした洗面器を見ていると、春の愁いがふつふつと湧いてくる。なんともし難いもどかしさに、思わずえいやっと顔を突っ込んだ。「い~ち、に~い、さ~ん、し~~・・・」
 愁うる心を払いのけたい、消し去りたいそんな気持ちなのだろう。そして数秒の後、閉じていた目を水の中でゆっくり開く。
 あえてひらがなの「ひらく」なのは、ゆっくりと開いていく感じがする。
 愁は吹き飛んだか? 消えたか? とりあえず、この人は顔を洗って今日一日を始めるのである。
   
(鑑賞:ひでやん)
(出典:句集『伊月集 龍』)