株式会社 夏井&カンパニー

ヒヤシンス手話もぴあのも漂へり  夏井いつき

季語
ヒヤシンス
季節
初春
分類
植物
鑑賞

 手話は視覚へピアノは聴覚へ、それらが漂っているという事は、同じ空間に居ながらピアノを弾く人は手話を理解できず、手話を操る人の耳にはピアノの調べが届かないのだろう。
 平仮名表記からピアノの奏者は子供なのではと想像でき、幼いが故に手話の意味を理解できないのではとも想像できる。
 お互いの最も雄弁な表現手段が通じない二人の関係は虚しいものなのか?
 いや、きっと楽しげにピアノを奏でる幼子の姿は聴覚を失った人の目に楽しく心地好く映るだろうし、それへの惜しみない拍手は、幼いピアニストにこれ以上無く明快な手話となって届くだろう。
 そんな穏やかで幸せな時間を、ヒヤシンスの香りが二人の共通言語となって優しく満たしている。
    
(鑑賞:立志)
(出典:句集『伊月集 龍』)