株式会社 夏井&カンパニー

こんなにも寒くて漢字なほも書く  夏井いつき

季語
寒し
季節
三冬
分類
時候
鑑賞

「最近、女性を中心に写経が流行ってるらしいよ」
  確かに、特集記事の載った女性誌を片手にやってくる女が目立つ。
「でも、どーせ、いっときの事だろ?」
 日本人は、流行に弱いのだ。
「あ、また一人やってきた」
「あの子も、足が痛ーいとか、つまんなーいって、すぐ投げ出すよ」
「今日は一段と寒いしね」
「……」
「やめないね」
「足も痺れているだろうにね」
 予想を裏切り、中々やめない女。
「黙々と漢字を書き写してる、よほど叶えたいことがあるのかな?」
「リフレッシュしたいのかな?」
「綺麗だよなぁ」
  凛とした空気の中、背筋を伸ばす女を見ていると、空気が一層凛とし、私の気持ちも清々しいものになった。

(鑑賞:天野姫城)
(出典:句集『伊月集 龍』)