株式会社 夏井&カンパニー

雪片にふれ雪片のこわれけり  夏井いつき

季語
雪片
季節
晩冬
分類
天文
鑑賞

 一読でポール・ギャリコ『雪のひとひら』が浮かぶ。ローゼン千津さんの解説(※注)にもある描写の科学的な正しさにまず感心。そして「雪片」のリフレイン。兼題は降りしきる雪の「せっぺん」だが、この句の印象は「ゆきひら」。「ふれ」て雪だと感じるのは一瞬だが、単に降り落ち消えるのではない。誰彼と「ふれ」合い関わり、そこに生ずるあれこれがあり、故に最期「こはれ」る。これを女性の一生に喩えたギャリコ。原文にも矢川澄子の名訳にもそれぞれに趣の違う美しさがあるが、この句は17音でそれらを凡て表す。改めて俳句の奥深さを感じ入る。
 はかない句だが、作者にひそむ本質=繊細な優しさがきらり、しんとした余韻がいつまでも残る。
(注:夏井いつき著『雪の歳時記』より)

(鑑賞:明 惟久里)
(出典:句集『伊月集 梟』)