株式会社 夏井&カンパニー

ひよどりのあれは青き実食みし声  とおと

季語
ひよどり
季節
初冬
分類
動物
鑑賞

 うっかり「青い実」を啄んでしまう「ひよどり」も、そりゃいるに違いないよという愉快。さらに「ひよどり」のヒーヨヒーヨと騒ぐ煩い声も、あ、こりゃ青い実だったよ、オレ青い実食っちゃった、みんなこれ苦いぜ! なんて、大袈裟に騒いでいるのかもしれないという空想的実感。
 発想勝負の一句ではありますが、語順がよく工夫されています。「ひよどりの」と始まる上五の後に「あれは」と置きました。代名詞をこの位置に入れることで、何が「あれ」なんだろう? と読み手の好奇心はかすかに動き出します。そして何よりもここから後の展開が鮮やか。「青き実」を食べてしまった……で終わらせず、最後に「声」を提示することで、読後の余白に「ひよどり」のヒーヨヒーヨという煩い声が響きわたらせます。言われてみると、あの声はなんだか苦いものを食べて騒いでいるようも聞こえてきます。作者の思うツボにまんまと嵌る愉快を味わわせてくれた一句でありました。

(鑑賞:夏井いつき)
(出典:松山市公式サイト『俳句ポスト365』2014年11月8日掲載分)