株式会社 夏井&カンパニー

ポケットに入らぬものに朴落葉  夏井いつき

季語
朴落葉
季節
初冬
分類
植物
鑑賞

 朴の葉は大きい。私の手のひらよりずっと大きい。朴の葉が緑色をしていた夏のころなら柔らかくてしなやかだから、くるくる丸めて小さくすることも出来たかもしれない。けれど今は冬。カサカサに乾いて落ち葉となった今は、まるで薄く伸ばして焼いた煎餅かクッキーのようだ。ポケットに入れようものなら、入れる端からパリパリと音を立てて砕け、その形を失くしてしまう。
 ああ、でも持って帰りたい。この大きくて立派な朴落葉を。極限まで乾いて緊張感に満ちた美しい形。どこも欠けていない完璧な形は奇跡的だ。
 仕方ない。後の予定はあきらめよう。神官が大切な供物を捧げ持つように、この朴落葉を持って家に帰ることにしよう。

(鑑賞:片野瑞木)
(出典:句集『伊月集 龍』)