株式会社 夏井&カンパニー

パエリアのエビは有頭黄落す  天宮風牙

季語
黄落
季節
晩秋
分類
植物
鑑賞

 「パエリアのエビは有頭」これだけの措辞で、「パエリア」が映像としてありありと再現されている点がなんとも見事。(米を着色する材料として使われる)サフランの黄色、有頭エビの赤を描いているだけなのですが、熱々のパエリア鍋が運ばれてきた時の印象はまさにこの通り。鮮やかな切り取り方です。「有頭」の一語もいかにも豊かな印象です。
 この句で最も誉めたいのは下五。上五中七で「パエリア」のことだけを描写し、カットが切り替わり、卓上の「パエリア」からこのレストランを包む「黄落」への展開、実に巧いですね。「黄落」の窓、秋のひかり、硝子のひかり、店内のざわめき、ワイングラスの音、香ばしい香り、有頭エビの赤、サフランの黄色。「黄落」という季語が、全てを包み込む空間が立ち上がってきます。「黄落」の黄色とサフランの黄色が、豊かに調和した作品。ああ、「パエリア」が食べたくなってきました!

(鑑賞:夏井いつき)
(出典:松山市公式サイト『俳句ポスト365』2014年10月31日放送分)