株式会社 夏井&カンパニー

岩塩に舐め痕残し牧場閉づ  烏天狗

季語
牧閉す(まきとざす)
季節
晩秋
分類
人事
鑑賞

 「岩塩に舐め痕」という映像をクローズアップし、さらに「残し」とくると、一体これは誰が舐めた痕なのだろう?という小さな謎が浮かびます。下五「牧場閉づ」という季語の出現によって「岩塩に舐め痕」を残していたのが牧場で飼われていた牛や馬であることが分かる、という語順がこの一句の巧さです。
 夏の暑い盛りには牛や馬がしょっちゅう寄ってきては舐めていた「岩塩」。残る窪みは「舐め痕」だったのかという認識が、読者の心に静かな光景を広げていきます。秋が深まった牧場は閉ざされ、放牧していた牛や馬たちは飼い主の元に返されます。「牧場閉づ」頃の風が「岩塩」の色のようにも思えてくる作品でした。

(鑑賞:夏井いつき)
(出典:ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2014年9月26日放送分)