株式会社 夏井&カンパニー

まつしろな秋蝶轢いたかもしれぬ  夏井いつき

季語
秋蝶
季節
三秋
分類
動物
鑑賞

 午後九時、周りが何も見えない初めての道を運転していた。窓ガラスを開け、まだ暑苦しい風へ煙草の煙を吐き捨てる。カーナビが小さな角を何度も曲がれと指示してくるので迂闊にヘッドライトを上げることも出来ない。何度目かの角を曲がったところで突然、道路に白い何かが飛び出てくるのが見えた。一瞬、驚いたが闇の中にはっきりと白く浮かび上がったそれは蝶だった。それはゆっくりとだが、俺を見つめるかにこっちへ向かってくる。気にせずにそのままアクセルを踏んでもそのまま近づいて来る。蝶が目の前にきた時、ガラスが汚れたら面倒だなとの思いから大きく左へハンドルを切ると、ガタンという強い衝撃と男の子の悲鳴が耳を貫いた。

(鑑賞:24516(にしこういちろう))
(出典:句集『伊月集 龍』)