株式会社 夏井&カンパニー

落シ水臭クテ手賀ハ豊穣ナリ   土井探花

季語
落し水
季節
仲秋
分類
地理
鑑賞

 「手賀」とは手賀沼のことですね。江戸時代、新田干拓が行われたこの沼は、行く度もの洪水被害を受けた沼でもあります。
 「落シ水臭クテ」を汚染臭と読む人もいるかもしれませんが、ここは下五「豊穣ナリ」から実りを司る栄養臭だと読みたいですね。稲作もいよいよ大詰めとなってくるのが「落し水」の作業。落ちてゆく水が思いのほか臭いことに、あらっ?と気づく、その小さな発見が俳句の核となりました。この豊かな実りを生んだ末の水なのだなあという実感が、「落シ水臭クテ手賀ハ豊穣ナリ」という言葉となって作者の胸中に姿を為した、そんな一句に違いなかろうと思います。「臭ク」という動詞のイメージとは裏腹なる「豊穣」の一語の豊かさ。この構造はまさに、「落し水」という季語の構造と同じ。なるほど、こんな作り方があったかと勉強させてもらった作品です。
 
(鑑賞:夏井いつき)
(出典:松山市公式サイト『俳句ポスト365』2014年9月4日掲載分)