株式会社 夏井&カンパニー

先生と大きな月を待つてゐる   夏井いつき

季語
季節
三秋
分類
天文
鑑賞

 そういえば私は月の出を待ったことがない。いつもバタバタと暮らしていて何かの拍子に外へ出て月に気が付く。
 作者はゆったりと月の出を待っている。しかも大好きな先生と(俳句の先生を想像した。)お酒を酌み交わしながら月の句の話をしているのかもしれない、近況報告をしているのかもしれない。とても豊かで期待に満ちた時間が流れている。句に使われている言葉は平明で、それゆえに月のシンプルな美しさや大きさが表現されていると思う。
 「行く春を近江の人と惜しみける」という句がある。心の通じる誰かと琴線に触れる場面を共有する嬉しさというものを私は俳句を始めてから知ったような気がする。月、待ってみようかな。

(鑑賞:矢野リンド)
(出典:句集『伊月集 龍』)