株式会社 夏井&カンパニー

日盛や漂流物のなかに櫛  夏井いつき

季語
日盛
季節
晩夏
分類
天文
鑑賞

 猛々しい草叢をかき分けてゆくと、小川が目の前にあらわれた。流れから外れた澱みには、漂流物が肩を寄せ合っている。ペットボトルや空缶に混ざって紫色の平たいものが見える。いくつか歯の欠けたプラスチックの櫛。無機質な物のなかで、唯ひとつ命の気配を残している。髪は女の命、言い古されたフレーズではあるけれど。
 黒髪、茶髪、そして白髪・・・生きて、愛して、涙して、日々髪をくしけずる女たち。
じりじりと照りつける午後の陽。彼女は、汗ばんだ顔ににまとわりつく髪を手の甲でぬぐった。

(鑑賞:中原久遠)
(出典:句集『伊月集 龍』)