株式会社 夏井&カンパニー

予後の眼に夏野の匂ひ飽くるまで  妙

季語
夏野
季節
三夏
分類
地理
鑑賞

 「予後」とは、病気治癒後の経過。この一語で作者の置かれた状況を語り「眼に」で眼病を推測させる、このあたりのテクニックも実に巧いのですが、この句の真の魅力は、「予後の眼」でもって「夏野の匂ひ」を感知する肉体的感受性の豊かさにあります。
 作者の「眼」に飛び込むのは、爆発的な「夏野」。その緑は「予後の眼」を満たし、草いきれは圧倒的勢いで「予後の眼」に押し寄せます。「匂ひ」を眼球で感知する感覚は、眼病の術後という状況におけるリアリティーとして、読み手の心に鮮やかに飛び込み、下五「飽くるまで」という余韻が、「夏野の匂い」にいつまでも浸っていたい作者の静かな喜びを、やわらかく受け止めます。

(鑑賞:夏井いつき)
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2013年6月26日掲載分)