株式会社 夏井&カンパニー

安達太良へ筍飯を握りけり  竹春

季語
筍飯
季節
初夏
分類
人事
鑑賞

 「安達太良」という地名の持つ悠々たる響き。「あだぁたぁらぁ」のア音が大空へ広がるかのような韻律であることは言うまでもありませんが、この大らかな句の姿を支えているのは、方向を示す助詞「へ」の効果ではないか、ということにはたと思い至りました。
 山へ向かって?山へ行く? 一体、どういう意味の「へ」かと思いきや、後半「筍飯を握りけり」とくる展開が実に巧い一句。山開きの日の握り飯か、はたまた初物への感謝を捧げる握り飯か。「へ」という助詞は、さまざまな方向に読み手の思いを広げます。筍を育ててくれる山は、毎日拝む美しい故郷の山。下五「握りけり」の詠嘆もまた、いかにも美味そうな「筍飯」の実感です。
(鑑賞:夏井いつき)
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2014年5月13日掲載分より)