株式会社 夏井&カンパニー

湯冷してぞつとするほど父に似る  夏井いつき

季語
湯ざめ
季節
三冬
分類
人事
鑑賞

 語順がいい。
 頭から読んでいくと、風呂あがりに湯冷してしまい、ぞっとするほど体が冷えたのかと思いきや、鏡に写る湯冷した自分の姿が父親に似ていたという展開に驚く。
 言葉通りに読めば作者は、父親がぞっとするほど嫌いなのかと思えるのだが、そうではなく、ぞっとするほど美しいという雰囲気がある。
 何故か?
 「湯冷して」は、「湯冷し(連用形)」+「て(接続助詞)」なのだが、この「て」が曲者。「湯冷し、それから」となる。
 もしかしたら、父親は亡くなっており、湯冷したその瞬間だけ、父親に会えるのなら、湯冷もいとわない。もしくは、そんな自分が、ぞっとするほど愛おしいのかも。
 これは、親愛なるファザコン句だ。
(鑑賞:天野姫城)
(出典:『伊月集 龍』)