株式会社 夏井&カンパニー

この団栗ドナルド・キーン氏に似たり 夏井いつき

季語
団栗
季節
分類
植物
鑑賞

指示代名詞「この」で俳句がスタートすることで、主体が団栗を拾うその瞬間に立ち会ったかのような錯覚を覚える。自身の名前の表記を変えるほど日本を愛し、研究するドナルド氏と、眼前の団栗を重ね合わせることで、彼が日本に来てくれたことへの喜びを伝える。これこそ夏井流のおもてなしだ。「氏」の一字から、ドナルド氏へのリスペクトを忘れない作者の人物像もうっすら想像できる。「似たり」と「けり」ではなく、「たり」を用いて表現したことで、団栗をしげしげと眺める人の優しい眼差しも見える。すべての語が強い効果を持ち、他の語を邪魔しない。上六も、固有名詞も、俳句的には荒技だが、技術を悠々と使いこなして想いを伝えている。

(鑑賞:黒岩徳将)